しごとば

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美容師さん、お寿司屋さん、野球選手、パイロット・・・。

いろんな仕事人の仕事現場の風景を描いた絵本「しごとば」

こども版ハローワークといったところでしょうか。

ただこの絵本には「絵本店」と「工務店」は載っていませんでした。

では、「絵本店」と「工務店」はどんなところなのかのぞいてみましょう。

 

工事の打ち合わせも大詰めのころ。

工事費用でペンネンネネムin the forestの行く末は大きく左右されると考えていたぼくには、

ある秘策がありました。

工事を請け負うのはこれまでずっと大阪でお世話になっていた工務店さんです。

この工務店の社長さんはとても気のいい方で、なんというか非常に情に厚い方です。

ぼくはその厚い情を利用してこれまでも秘策を切り札に工事代をサービスしてもらってきました。

そして今回は、どれだけ安く工事してもらうかというよりも予算内でどれだけの作業をしてもらえるかがポイントになっていました。

 

須磨の午後。

ぼく「ちょっと3点ほどお願いあるんですけど、今回の工事に雨どいの交換も込みでお願いできませんか?」

工務店さん「はあ~?ネネムさんむちゃ言うたあかんわ!これでも安いはずよね?それやったら予算上げてもらわんと」

ぼく「わかってます。それは十分理解してるんですけど、この予算を超えるわけにはいかんのですよ」

工務店さん「それは無理やて。今でも職人さんらには結構無理言うてんねやから」

ぼくはさっそく切り札を切りました。

ぼく「わかりました。雨どいは、もう自分でやりますわ」

工務店さん「・・・ネネムさん、無理やて。素人が雨どい付け替えるなんて」

ぼく「んん、でもこのままってわけにもいかんし・・・まあ頑張ってみます」

工務店さん「簡単に言うけど、足場も組まなあかんしアブナイからそういうのはプロにたのまんと。やめときて」

ん?

くるか?

工務店さん「・・・(深くため息をついて)じゃあ、2階部分の雨どいはなしにして1階部分だけでもいい?」

きた!

ぼく「あざ~す!・・・それとですね、庭の木なんですけど、どうしても切ってほしいのがあるんですけど一緒にお願いできません?」

工務店さん「え~!?うち工務店よ?造園屋ちゃうんやから木の伐採なんか専門ちゃうのに・・・(庭の方を見て)どの木よ?」

ぼく「(庭の木を指さして)あれとあれとあれとあれと・・・」

工務店さん「・・・ええ?10本も?」

ぼく「11本です」

工務店さん「無理無理、これは勘弁して」

ぼく「「でも、これやっとかんと新築の方も進められへんし、なんとかなりません?新築建てる時も絶対おやっさんとこにお願いしますんで・・・」

工務店さん「・・・」

新築発言でちょっと揺れたようです。

ぼくはすかさず2回目の切り札を切りました。

ぼく「はあ・・・そうでうか・・・やっぱきびしいですよね?まあ、なんとか自分でやってみますわ」

工務店さん「だ・か・らアブナイから。あんな大きい木、下手したら大事故なるよ?だいたいチェーンソー持ってんの?」

ぼく「今、アマゾンで探してるんです」

こい!

工務店さん「(深くため息ついて)もうかなわんなあ・・・7月中は無理よ。いつできるかも決められへんし、スケジュール内では無理やけど、それでいい?」

ぼく「あざーす!助かります・・・あのお・・・」

工務店さん「・・・ま、まだあんの?」

ぼく「できたらその解体の時の廃棄物の処理も込みでお願いしたいんですけど?」

工務店さん「え?ネネムさん、処分業者自分で見つけるって言ってたやん?」

ぼく「そ、そうやったんですけど、実際見積もりとったらおそろしい金額やって・・・」

工務店さん「だから言ったのに、結構高いでって。うち若い子二人でやんねんよ?ここ土壁多いからすごい廃材の量なるよ?その処分をこの若い子二人になんかさせられへんよ?しかもこんな熱い日続いてんのに?」

桜の木にとまったセミがミンミン鳴いています。

ぼくはここで3回目の切り札を切りました。

ぼく「はあ・・・やっぱそうですよね・・・こればっかりは自分でやらんと無理ですよね・・・」

工務店さん「申し訳ないけど」

わ、切り札見透かされた?

ぼくは仕舞っておいたとっておきの最後の切り札を放り込みました。

ぼく「でも、けっこうバケツリレーでやったらいけそうな気するんすけどねえ?」

工務店さん「バケツリレー?」

ぼく「ええ。ここからトラックのとこまで10人ぐらいで列になって流れ作業で廃材運んでいくんです」

工務店さん「10人って誰?」

ぼく「うちのバイト」

工務店さん「ネネムさんのとこ女の子ばっかりやんか?お、女の子らに、こ、これさせる気?」

ぼく「しゃーないです。つらいとこですけど、店休みにして全員呼んでやらせます」

工務店さん「あかんあかんあかんあかん、そんなん絶対無理無理無理」

ぼく「だってそれしか方法ないんですもん」

工務店さん「ネネムさん訴えられるで」

ぼく「もうペンネネネムBLACKに名前変えますわ。ハハハ」

工務店さん「・・・」

表情からそうとう最後の切り札は効いてるようです。

くるか?

工務店さんは少し離れたとこに行って誰かと電話し始めました。

くるか?

工務店さんがぼくのところに近づいてきます。

きてくれ?

工務店さん「ネネムさん、こんどの工事代、あれ、税別にしてくれる?ほんならやってあげるわ」

きたー!

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 解体工事が始まりました。

 

20歳前後の若い男の子がとんでもなく積み上げられた廃材をトラックに運んでいきます。

桜の木のセミがうるさいです。

1時間してイケメンの男の子二人の顔が歪んできました。

2時間して男の子二人の汗で水たまりができそうです。

ぼくはちょっと心苦しくなって庭でほかの業者さんと打ち合わせしていた工務店さんに声をかけました。

ぼく「ぼく店帰るの一時間遅らせましょか?」

工務店さん「なんで?」

ぼく「いや、あの子らちょっと手伝ってあげたほうがいいかなって」

工務店さん「いいよそんなん。なに言ってんの?あれ仕事やないの?あの子らあれでお金もらってやってんねやから。ネネムさんお金払ってんねんから、変なこと考えんでええの」

ぼく「でも・・・」

工務店さん「仕事仕事。若いうちはみんなすることやから」

そういって工務店さんはまた打ち合わせに戻りました。

ミンミンミンミン。

早くセミが鳴き止んでほしいなと思いました。

 

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これから日本の未来を担う子供たちへ。

絵本店と工務店選びだけはどうぞ慎重に。