つみきのいえ

地球の海面がどんどん上昇しておじいさんの家は海の中に沈んでしまいそうになります。

おじいさんは海面に没しないよう家を高くしていきます。

3階建て、4階建て、5階建て・・・どんどん高くなっていく家。

まるで、つみ木をつみ上げていくように。

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 須磨の家を契約して、さっそく建築の準備に取り掛かりました。

建築士さん「どういったイメージで建てられますか?」

ぼく「えーと、こんな感じでお願いしたいんですけど」

プリントアウトした写真を見せました。

建築士さん「はあ…これいいんですけど、すごいお金かかりますよ?」

ぼく「ざっと見積もっていただいていかほどで?」

建築士さん「まあ軽く億は超えますねえ」

ぼく「やめときます」

建築士さん「これ、どっかで見たことあるような気きがするんですけど、なんでしたっけ?」

ぼく「カリオストロ城です」

建築士さん「ん?」

ぼく「あ、ルパンの。ジブリの」

建築士さん「あーはいはい。でもこういう古い石を使うのは取り寄せになるんで相当費用かさみますねえ」

それから何枚かイメージ写真を見ていただいたんですが、どれも予算との差が大きく、結局計画は前進しませんでした。

 

ぼくは計画の見直しを考えました。

須磨の家はフルリフォームして、1、2階をカフェ、3階を別荘、そして屋上に展望台を作ろうと考えていました。

ここは海を見下ろす景色がいいので、できるだけ目いっぱい高い建物にして屋上にソファとゆるい音楽のある展望台をつくりたいと考えていました。

この展望台計画だけはどうしても外したくなかったので、それ以外の部分で修正を考えました。

考えてるうちに現地を見た時の建築士さんが言ったことを思い出しました。

建築士さん「いいとこですねえ。ここでカフェってすごい夢広がりますねえ?なんかあのトトロっぽいですよね」

ぼく「トトロですか?」

建築士さん「メイちゃんのおうちってこんな感じじゃなかったですか?」

建築士さんにそー言われて改めてその家を見てみると確かに平屋と2階建ての建物がくっついていて和風とも洋風ともつかない感じのメイちゃんのおうち風かもしれません。

ここを全面リフォームではなく、床、壁、天井だけの部分リフォームに変えて、小さな新築の展望台を作るっていうプランならだいぶ安く上がるかも?

次の日また建築士さんと打ち合わせなので、それまでにその小さな展望台のイメージを完成させようと考えているうちに眠りについてしまいました・・・。

翌日。

結局小さな展望台のイメージは浮かばず、ペンネンネネムのテーブルで打ち合わせが始まりました。

建築士さん「いいお店ですねえ。絵本と置物の量がすごいですねえ。いろいろ飾ってはるのでキョロキョロしてしまいますよ」

ぼく「ありがとうございます。最初はもっと少なかったんですけど、営業していくうちにどんどん増えていったかんじですかね」

建築士さん「そうなんですか。でももうこれ以上増やせないんじゃないですか?天井から床までいっぱいいっぱいでしょ」

ぼく「いや、たぶんまだスキマみつけて棚作ると思いますねぼくは」

建築士さん「ハハハ。もうスキマないでしょコレ。あれですか常に新しい展開をしてお客さんを飽きさせない戦略とか」

ぼく「いやいや、そんなことまで考えてないです。もう単純にこーやって棚取り付けていろいろ飾ってっていうのが一番楽しい仕事なんです。ずっとやってられるというか」

建築士さん「へー、じゃあ次のお店も楽しみ増えるじゃないですか?」

ぼく「ですねえ。もうできれば完成してほしくないぐらいですよ。ずっと作り続けたいですもん」

建築士さん「サクラダファミリア的な」

ぼく「ハハハ、そんないいもんじゃないですけど」

 そんな話をしていたからか店の中にあるお城や家なんかの建物の絵本や写真集が並んだ棚を目で追っていました。

そこにある一冊の絵本に目がとまりました。

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 ぼく「さっきお話してた新築の展望台なんですけど、こんな感じで作ってほしいんです」

ぼくは絵本「つみきのいえ」をテーブルに置きました。

建築士さん「ほおほお。ちょっと西洋風な感じで外階段があってレトロな窓枠でって感じですね」

ぼくは「そうですねえ。この展望台のこの感じを出してほしいんですけど」

建築士「はあはあ、ちょっと欠けた外壁って感じですかこれ?」

ぼく「これね、海面が上がってきてつみきみたいに家を積み上げていく話なんです。で、その積み上げていってる途中の壁を表してるんやと思います。こんな感じに作ってもらえれば」

建築士さん「・・・」

変な間があいたので、なんかおかしなことを言ってしまったのかと不安になりました。

建築士さん「いやあ、ネネムさん深いですねえ~。まさに未完成の建物ですもんねえ」

ぼく「いやいや違います違います。たまたま偶然ですよ。デザイン的に気に入ったんがコレやっただけで、話の内容が偶然重なっただけですって」

建築士さん「いやあ、ネネムさん素晴らしい!」 

ぼく「・・・」

結局、新築の展望台は「つみきのいえ」風ということで落ち着きました。

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あの建築士さんが勝手に積み上げたぼくの奥深さをなんとか積み下ろしていかないといけないのがちょっと面倒ではありますが、これから新しい未完成のペンネンネネムをずっと作り続けていきたいと思います。

つみ木をつみ上げるように。